2008年04月09日

ポール・クレイビッチ

先日ちょっとした偶然が重なって
東京へ行ってきた。

約十年ぶりくらいに父親のマンションを訪ねた。
それまで何度か東京に行く機会はあったが、
父親にそれと告げたことはなかった。

あの可愛らしい女の人は
相変わらず可愛らしく
そしてかいがいしく
父親の世話をしており
まるで本当の夫婦みたいだった。

僕はこの父親の愛人を
いとおしく思うたび

20年前の3月

住んでいた家を後にした時の
母親の横顔を思う。

母は振り返らずに
ひたすら
前を見て歩いた。

そんな時

僕の胸は
決まって
不思議な熱を孕む。

その熱は
胸の中程を
かすかに焦がし
やがて消える。

僕はこの熱が
いつか燃え上がってしまうことを
心から恐れる。

僕は
もう
誰も嫌いに
なりたくないのだ。


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