2008年06月04日

ローランド・カーク

僕が行き先を
ヨーロッパに決めたのは
支配者たちの
歴史を
見てみたかったからだった。




9年前のあの時
うまく『ことば』に
できなかったことが

時を隔てた
『今』
恐ろしい程
あっさりと
目の前に
投げ出される。

もしかしたら
僕は
『今』

それを
拾うことに
夢中になって

立ち止まって
しまっているのかも
しれない。  

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2008年05月27日

レジナルド・ヴィール

19歳の
僕にとっての
ヨーロッパは
泰然とした大人だった。

なにしろ
流してきた
血の量が
違う。

痛みは
人を
慎重にする。

痛みに耐えてなお
続いていく命に
注意を払うようになる。

僕は
そのとき
19歳で
痛みなんて
知らなかった。

自分の欲しいものは
すべて
手に入ると思っていた

ただの
子どもだった。  

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2008年05月25日

ルイス・ヘイズ

1999年当時
アメリカは強くて若い国だった。

若さは
時として
とても
傲慢だ。

すべてを
手にしながらも
なお
それ以上を
求めて止まない。

恐れを知らない
強さは

誰をも
すばらしく
魅了する。

しかし

いつか

限界を知る。

恐ろしく
陳腐な話だ。

僕は1999年
19歳だった。

19歳の僕にとって
アメリカの傲慢を
許すことは

自分の
甘えやずるさや傲慢を
許すことと
イコールだった。

『少年の思いは飛躍しやすい』

川崎弘は偉大だ。

  

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2008年05月20日

リン・シートン

1999年


僕は
単身
ヨーロッパへ
飛んだ。  

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2008年05月19日

ラリー・グレデネディア

大人になるということは

自分の軸を社会の軸に
合わせていくことだ。

こどもは
世界の王様だ。

僕は恐らく
わりと早いうちから
色々な人の
気持ちを
知ってしまっていた。

だから
僕は
(すごく恥ずかしい話だが)
色々な人の
気持ちが
わかるような気になって
図に乗っていた。

結果

僕は
人よりも
長い時間をかけて
大人になった。




  

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2008年05月18日

ヤスヒト・モリ

僕が沖縄に帰ってきたのは
9月の中ごろ。

那覇空港は
かつて
僕と母と姉が
小さな荷物を持って降り立った
小さな空港ではなくなっていた。

僕が
どこで
何をしていようと
様々なことが
僕に関係なく動いていく。

そのことは

19歳だった
僕の行動を
大胆にさせた。

それと同時に

僕の心を
ひどく
臆病にさせたのだった。  

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2008年05月06日

モーズ・アリソン

連休中、
同級生の実家で
バーベキュー大会が催された。

強く吹く
風のおかげで
炭に点火するのに
ものすごく
時間がかかった。

ようやく
肉が焼けたころ

心地よい
風が
火照った
僕らの
肌を冷やした。

風が
花を添えてくれたのだと
誰かが言った。

十年以上前
将来の夢を
語り合ったときのように
僕達は
他愛の無い
とりとめの無い話をして
笑った。

この先
ずっと
こういうふうに
過ごせたらいいなと思った。

友達の母親に
来年も再来年も
こういうふうに
遊びたいと
お礼も兼ねて言ってみた。

彼女は少し泣いていた。

人と人は
こんな風に
つながっていく。
  

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2008年05月02日

ミッシェル・サーダビー

1999年の夏の終わり

僕は色々な人から
色々な話を聞いた。

東京から鹿児島までの道のりは
とても長かった。

僕はインターチェンジの傍で
長距離トラックを待つことを
あえてしなかった。

僕を乗せてくれた車は
たいてい乗用車だった。

車は動く密室だ。

しかも
持ち主の。

僕を乗せてくれた人たちの数だけ
たくさんのストーリーがあった。

僕はひたすらに
話を聞いた。

時々
その人の話に対して
何かを言いたい気分にもなったが
ゆきずりの僕が
言葉を遣って
何かを伝えることなど
できるはずはないと思った。

僕はひたすらに
話を聞いた。

あのときの

僕の気持ちは

『ことば』に

ならずに

そのまま

消えた。  

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2008年04月25日

マーシャル・トンプソン

『こころ』にはかたちがない。

しがって
『こころ』を『かたち』にすることは
はじめから無理な話だ。

それでも。

紡ぐ『ことば』に
『こころ』を託す。

どうか
この『こころ』が
消えてしまわないように。

それはほとんど祈りだ。  

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2008年04月09日

ポール・クレイビッチ

先日ちょっとした偶然が重なって
東京へ行ってきた。

約十年ぶりくらいに父親のマンションを訪ねた。
それまで何度か東京に行く機会はあったが、
父親にそれと告げたことはなかった。

あの可愛らしい女の人は
相変わらず可愛らしく
そしてかいがいしく
父親の世話をしており
まるで本当の夫婦みたいだった。

僕はこの父親の愛人を
いとおしく思うたび

20年前の3月

住んでいた家を後にした時の
母親の横顔を思う。

母は振り返らずに
ひたすら
前を見て歩いた。

そんな時

僕の胸は
決まって
不思議な熱を孕む。

その熱は
胸の中程を
かすかに焦がし
やがて消える。

僕はこの熱が
いつか燃え上がってしまうことを
心から恐れる。

僕は
もう
誰も嫌いに
なりたくないのだ。  

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2008年04月02日

ヘインズ・ロイ

僕は随分長い間
ひとりで生きてきたと思っていた。

おこがましいが
正直にいうとそんな感じだった。

もちろん
そんなことないことは
頭ではわかっていた。

それでも

腑に落るまでにかなりの年月を
必要とした。
  

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2008年03月28日

フィービー・スノウ

人を救うのは
人だと思う。

今日
僕は
お休みだったので
部屋に掃除機をかけて
布団を干して
免許の更新をして
渚と海に行った。

全部僕がやらなければならなかったし
やりたいと思ってやったことだった。

それなりに
充実した休日だった。


それでも
親しい友人からの
誘いは
なにものにも
換えがたい。

僕は
今日
確実に
救われた。  

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2008年03月27日

ピーター・アースキン

思い出は

いつも

こころの

そばにいる。


ふとした瞬間

いま、そこにある
『現実』をおしのけて
顔を出す。

僕は
そのたび
『そのとき』に
戻ったみたいに
錯覚する。

それでも
それは
錯覚に過ぎないことを

僕は
知っている。


1995年と1998年の
この季節

まるで意味のないような
時間をひたすらに共有した
あの思い出たちは

今でも

こころのどこかで

静かに

でも

確実に

息づいている。


くじけがちな

僕の背中を

やさしく

支えてくれる。  

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2008年03月10日

バーニー・ケッセル

1999年の夏が終わる頃
僕は世田谷の父親のマンションを辞し、
友達の家を一週間くらい転々とした。

その後、鹿児島まで
ヒッチハイクで南下した。  

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2008年03月07日

ニック・ウェルドン

ラクジツニ
コボレテサクカ
キンレンカ


久しぶりに
渚とデートをした。
二人っきりだ。

羽地ダムは素晴らしかった。
風に向かって飛ぶ鳥を見た。

ナスタチウムとメイフラワーが
咲いていた。

素敵な町並みだと僕は思った。

ゲートボールをする人たちに
声をかけられた。
「こんな何もないところ」

僕の見ている美しい風景は
誰かにとっての日常なのだ。

そして
いつか
僕にとっての日常を
誰かの眼が美しく彩る。


夕日は
いつもと同じ色をしていた。  

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2008年02月14日

ナット・アダレイ

僕があの夏
東京で得たものは
数え切れないくらい
たくさんある。

そして
失ったものが
ひとつだけある。

しなやかな身体の
偽名で金髪で住所不定の恋人。

僕は彼女を本当に好きになることができなかった。
その努力すら放棄した。
彼女もまたそうだった。
(・・・と僕は信じている。)


その当時、
思っていることを
忠実に「ことば」にすることが
僕にとっての
誠意だった。

長い間かけて考えたことば。

「僕の人生に君は要らない。」

僕は彼女にそう言った。

彼女は当然
傷ついた顔をした。

それでいいと僕は思った。  

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2008年01月31日

ポール・チェンバース

彼女は申し分のない肉体をしていた。

スレンダーで
均整の取れたスタイルも
さることながら

とりわけ
肌を合わせたときは
素晴らしかった。

端正な顔が
快楽に歪み
白い背中は
弓なりにしなった。

彼女は
すべてが終わると
ガラムを吸った。

僕はその香りに酔った。  

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2008年01月28日

ベニー・グリーン

JR新宿駅東口から西口への連絡口。

バイト帰りに必ず通るその場所で
僕は1999年の恋人を見つけた。

ジャックと名乗る
金髪で露天商で
住所不定の女の子。

何度かの立ち話のあと
僕は彼女に興味を抱いた。
彼女自身のストーリーを知りたくなった。

「喋り方でわかるよ。君は旅人だろ?」
我ながらまずいことを言った。
それでも彼女は答えてくれた。

僕の予想は
あながち間違いではなかった。

彼女は全国を転々としていて
その年の夏には神保町にある
一泊千円の安宿に寝泊りしていた。
「長期滞在は割安になるの。」
そう言って
彼女はきれいに笑った。

僕は彼女に興味を抱いた。
彼女も僕に興味があった。

デートを申し込んできたのは彼女のほうだった。
初デートは新宿御苑だった。

芝生に寝転んで膝枕をしてもらった。

彼女はいつも
いいにおいがした。
人工的な
花の匂い。
あれは恐らくグッチだった。

時々
強い
煙草を吸った。
お香のにおいのする
ガラム。緑色の方。

僕はその当時
煙草を吸う習慣がなかったので
薦められても断った。

その後ガラムを日常的に吸う人に
遭遇することはなかった。

そんなわけで
ガラムの味を
僕は知らない。  

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2008年01月24日

ブライアン・ブレイド

僕の母は
世間の常識というものから
少し外れたものの見方と考え方をする。

僕の母は
たいがいとんでもないことを言う。
(たとえば劇団を旗揚げしたいとか、レンガで家を手作りしたいとか。)

そして
時々まともなことを言う。

どちらも僕の母だ。
どちらの母も
悪くないと思う。  

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2008年01月24日

ピーター・ワシントン

こうして書いていると
あの頃の
東京を思い出す。

1999年。夏。

とりわけ僕が
強烈に覚えているのは
JR新宿東口から
西口への連絡通路だ。

ちょっと地下へ潜ってゆくあの感覚。

大胆にごったがえしている東口から
少しだけ人の暮らしの匂いがする
ごちゃごちゃした狭い通りを抜ける。

色々な種類の人がいる
あの感じ。

そしていかにも
都会的な西口へ。

慣れるまでに
何度も迷った。

それだけに
未だに
いとおしい。

僕はそこで
その夏の恋人を見つけた。

露天商をしていた
年上で金髪で偽名の女の子。

一日に一回
必ず会う。(通勤のルートだった)
ロレックスのパチモンをネタにして
何となくおしゃべりをした。

僕は何しろ19歳だった。

「恋が生まれるには
ほんの少しの希望で充分なのです」

スタンダールは僕の好みではないけれど。

  

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