2020年07月27日

撫子

―花を飾らない私でも貴方が飾った花をきれいだなって思うから
 そういうことなのではないの?

 僕の大切な人は
 むしろ不思議そうにそう言った。

―イヤ、それはそうなんだけど、それ以上の意味を求めて
 ことばにして自分の腑に落ちるところまで考えておきたいんだ。

 そうじゃないと僕が一生懸命育てている花の命を短くしてまで
 (あまつさえその本来の目的であるはずの生殖の可能性まで絶って)
 家の中に飾るには花々に申し訳が立たない。

 …という話はきっと彼女にとっては退屈で 
 もし僕がどんなに熱を入れて
 そのことを説明しようとしても
 すぐに飽きて徐にスマホをいじくりだすことが
 ありありと想像できた。

 ので、『そうだね』と笑っておしまいにした。



Posted by いわしろ at 22:04│Comments(0)
 
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